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TOEICのこと
 

TOEICのこと(雑誌『選択』の記事について)

                         平田 周

 

 敬愛するK氏から、20114月号の雑誌『選択』に掲載された「日本人の愚かな

[TOEIC信仰]」という記事を送ってもらった。氏は、TOEICに対して、強い疑念を抱いている一人である。私も、TOEICの異常なブームを歓迎はしない。しかし、TOEICについて批判するとき、TOEICという英語力評価法自体の批判と、それをここまでブームにした人たち、そしてTOEICの点数を盲信する利用者(企業や日本人)への批判は区別して考えるべきだと思う。

 

 まず『選択』に載っている記事の内容の要点をまとめておこう。同記事は、TOEICの狂ったブームを次のような表現で示している。

 

    企業社会ではTOEICが英語力の事実上の基準になってしまっている

    文部科学省は、英語教員はTOEIC 730点ぐらいは必要と報告書に書いている

    米国発祥のテストと勘違いしている

    TOEICのスコアは高くても、実際に通用するレベルの英語力ではない

    試験問題について外部専門家による検証の道が閉ざされている

    集団基準準拠テストである(目標基準準拠テストではない)

    50点の誤差があることをETS(米テスト開発機関)は認めている

    グローバルスタンダードではない(受験者の65%が日本人、12%が韓国人)

    コミュニケーション能力を測るものではない

    「国際ビジネスコミュニケーション協会」の公益法人としての不適正

    韓国では脱TOIC化を進め、中国では「ケンブリッジ英検」と提携している

    TOEIC信仰のあおりで、他の英語力養成が等閑に付されている

 

 国際ビジネスコミュニケーション協会は、TOEICの特徴として次の3つを挙げる。

 

 .好灰評価:変わらない評価基準

◆.哀蹇璽丱襯好織鵐澄璽鼻Юこμ90カ所で実施

 コミュニケーション:英語能力の総合評価

 

 記事では、この3点についてそれぞれ詳細な批判を行っている。,砲弔い討蓮▲好灰評価があくまで「集団基準準拠テスト」であり、統計処理により絶対評価らしき装いをこらしているが、結局は個々人の点数を母集団のスケールに当てはめてランキングしているにすぎないと批判する。△砲弔い討蓮▲哀蹇璽丱襯好織鵐澄璽匹般誕任辰討い襪、1970年代に日本人有志が発案し、米国のテスト開発機関Educational Teaching Service (ETS)に依頼して作らせたものにすぎず、世界で全く認知されているものでないことを指摘する。に関しては、コミュニケーションを謳っているが、コミュニケーション能力という複合的なものをリーディングとリスニングで捉えようとすることは無理であると指摘する。

 

 以上のような『選択』の記事にある批判について、事実に間違いはない。ただ、冒頭に述べたとおり、批判の対象が本来3つに分けられるべきを1つにしているところに、TOEICの批判として偏りがあるように私は感じる。その点について、若干、意見を述べてみたい。

 

まず、TOEIC自体について:理想の語学教材というのはありえない。学習する目的によっても違い、レベル、また個人差もある。インターネットで調べれば、TOEICに使われている文章や設問について、ネイティブによる批判が数多くあるが、批判はどんなものに対してもできる。1980年代半ば、TOEICに初めて接したとき、これはよく出来ている教材だと思った。当時は、一般向けのものでは、実用英語技能検定(通称英検)しかなかった。その後、わが国で文科省が後援する権威ある実用英語技能検定が、TOEICに人気の点で完全にやられてしまったのは、やはり教材として魅力があったからではないか。受験者の数では、2009年を見ると、英検が226万人で、TOEIC168万人を上回っている。英検は2003年、ケンブリッジ大学ESOL Examinationsと業務提携し共同研究を行うことを合意したほか、アメリカの一部の大学では留学資格として認められている。

 『選択』の論者が、この英検との比較を全くしていないのは問題ではないか。

 

 TOEICの推進者である国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、特例財団法人である。公益法人でありながら、大きな利益をあげており、私物化されているという非難もある。不正行為があった特例財団法人漢字検定協会とよく似ている。

 TOEICは、もともとタイムライフの社長だった北岡靖男氏が、ポケットマネーでアメリカのETSに開発を頼み、TOEICと名づけた。私が北岡氏に会ったのは、1980年代半ばで、彼は国際ビジネスコミュニケーション蠅亮卍垢箸靴董∪嶌笋忙務所を構えていた。当時、TOEICの売り上げが伸びず苦労していた。その頃、いまも会長である元通産官僚だった渡辺弥栄司氏が、教育事業で成功するには行政との関係を持たなければダメだと入れ知恵し、国際ビジネスコミュニケーション協会が設立されたという経緯がある(公益法人として通産省の認可になったのは1986年)。北岡氏が亡くなったのは1997年である。まだTOEICは今日ほどの隆盛ではなかった。

 ここまでTOEICが成功したのは、渡辺氏の腕というべきであろう。公益法人が主宰するから問題で、創立時と同様、株式会社として運営されていれば、不正がないかぎり、どのような戦略であれ、成功を非難することはできない。

 

 やはり一番の問題は、TOEICの性格をよく理解せず、TOEICの点数がそのまま英語の実力を示すものだと誤解している利用者の側に責任があるのではないか。企業、とくに人事部が、新卒採用にあたってTOEICの点数を評価に加えたことが大きな力となった。そのために、就職に懸命な学生、また学生の要求を満たさなければならない大学側が、TOEICの点数を上げることに夢中にならざるを得なくなったのである。

 企業の人事部は、端的に言って英語に弱い。グローバル時代に通じる人材を採用するのに、独自の評価法や面接で力を試すことができない。英検では、1級、2級合格といった資格であって、採用応募者を比較できない。学習するほうも、点数は自分の現在の力を知り、学習の目標を立てるのに点数は便利である。

 このブログでも何度か問題にしたように、わが国企業の英語教育に関する関心の低さ、英語問題からの逃避こそが問題なのであって、TOEICにその責任を被せるのはいささか筋違いではないかと思う。企業のトップが社員の英語力に熱心であるかどうか

がまずもって問われるべきだが、英語が苦手な社長に、英語教育に力を入れましょうという進言をすること自体が憚られるのが現実である。さらに問題なのが、英語ができても、昇進の材料にはならないことである。むしろ、英語力に長けていると、通訳や翻訳に使われ、若い頃は社長のかばん持ちで海外出張を共にするということはあっても、営業や製造の現場を経験しない悲しさから、海外事業部においてすら中心的な存在になれないという事実がある。

 

 TOEIC自体、あるいは主宰する国際ビジネスコミュニケーション協会に問題があるとしても、もっと問題なのは、企業の英語に対する問題意識や姿勢ではないか。同じことは、英語問題を文科省に丸投げする経済産業省にも言える。TOEICの異常ブームを批判する前に、そのような誤りを生み出す根本にメスを当てるべきであろう。

 もう1つTOEICの援護をするならば、もしTOEICがなければ、学生がここまで英語学習に関心を持ち、勉強したかどうかである。大学受験の英語が、実用とはかけ離れた英語だとして非難された時期があった。英語を大学受験の必須から外す大学が増えた。結果的に、英語ができない学生が激増し、経済学も教えられなくなった。また、

点数の正確な妥当性、あるいは実用的な英語力との乖離の問題はあるにしても、蓋然的に英語力のレベルを示すものであるのは間違いない。ただ、入試英語と同様に、点数を上げることが目的になっては本末転倒である。

 いかに優れた方法を編み出しても、それが関心を呼び、普及しなければ意味がない。それよりは、ここまで人気を得たTOEICをよりよいものに修正するほうがよいのではないか。TOEICのデリバティブを作ることはそれほど難しくはないはずだ。

 最後に、『選択』の記事が、韓国は脱TOEICの方向に向いている。中国はケンブリッジ英語と提携したといった、隣国を例にとって、日本が遅れていることの問題認識をさせるやり方は、わが国でしばしば用いられるが、それは卑怯なような気がする。日本の問題は日本の立場で考えるべきだろう。

author:平田 周, category:外国語, 11:40
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