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『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』を読む
 

『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』を読む

                           平田 周

 

 川口マーン惠美著『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』(講談社+α新書 2013/8 9784-062728140)を読んだ。面白かった。内容は以下のとおり。

 

第1章 日本の尖閣諸島、ドイツのアルザス地方

第2章 日本のフクシマ、ドイツの脱原発

第3章 休暇がストレスのドイツ人、有休を取らない日本人

第4章 ホームレスが岩波新書を読む日本、チャンスは二度だけのドイツ

第5章 不便を愛するドイツ、サービス大国の日本

終章 EUのドイツはアジアの日本の反面教師

 

 ドイツと聞くと、同じく戦争で敗れた国だが、世界における存在感はわが国よりもはるかに勝っており、EUをリードし、国民もしっかりとした考えを持つ国というイメージが強い。

 しかし、著者は、両国を比べて、8勝2敗で日本に軍配を上げる。著者は、シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科を修了、その後ドイツに30年も住み、作家でもある。日本とドイツをしばしば往復することから、両国の人々の生活ぶりだけでなく、現在の政治経済や教育などについても詳しい。

 日本人が外国から祖国を見ると、内にいてはわからないことが多い。

 

 著者は、音楽大学の卒業者であり、女性であることから、身近な生活の話題をとりあげてドイツ人と日本人の暮らしぶりを話しているのだろうと思ったが、とりあげているテーマは、領土問題、原発問題、教育問題、移民問題、さらにはEUとTTPに共通する問題をとりあげるなど、意外にも政治経済的な問題を話題にしており、参考になった。ドイツに住んでいて、このような話をできる人はそれほど多くはない。

 

 労働時間が少なく、しかも高給というのに、ドイツ人の誰もが、仕事に不満を持ち、ストレスが溜まっているのだという。

 労働時間は短く、賃金が高く、社会保障費の半分を雇用者が負担しなければならないから、雇用者側は、当然、できるだけ従業員を増やさずに、労働効率を上げようとする。ドイツ人は終業時間になれば一刻も早く帰りたがる。そのため、時間内にこなさなければならない仕事がだんだん増える。何が何でも時間内に仕事をこなそうと皆が常に焦っていて、勤務中、極端に不機嫌。職場では、終業10分前にかかってきた電話には出ず、閉店10分前に店に入ると、店員は不機嫌な態度をするという。午後5時になってから、さあこれから仕事を片付けなければと思ってしまう日本人とは大違いである。

 

 休暇はドイツ人にとって最も楽しみにしている年中行事である。年間約30日ある有給休暇のうち、メインの休暇は3週間まとめて取る人が多い。たいていの人は休暇中に旅行に出る。旅行の内容もますますエスカレートして、南極大陸に行った人までいる。本来、休暇はストレスの軽減のためなのだが、旅行で疲れてしまって、リラックスにもリフレッシュにもならず、ドイツ人のストレスはいっそう高まるのだという。日本人が、夜、お風呂に浸かってリフレッシュするというようなストレス解消法も持たない。

 

ドイツの鉄道では、事故が起きて電車が動かなくなっても、車掌は謝らないどころか、状況説明も、どうすればよいかも説明しない。駅の案内係りも情報を持たず、振替輸送などまったくない。ある電車で冷房設備が壊れ、窓の開かない特急列車の車内の温度は60度に上った。団体旅行中の学生の苦情も女車掌は無視、人が倒れ始めてからようやく停車して、救助を始めたという。

 日本の鉄道のすばらしさをドイツ人が聞いても、すぐには信じられないであろう。複雑な東京の地下鉄の車掌さんに乗り換えを訊ねれば、どの車掌さんでも丁寧に説明してくれる。

 ドイツ人ほど、几帳面で、人一倍規則を守る国民はいないと思っていたが、電車が予定より10分遅れて着いても、ピッタリ定刻だったというドイツ人には、日本の秒単位で時間を守る日本の鉄道を知ったら、驚嘆するであろう。宅配便の指定が2時間単位でできるなど、想像すらできない。

 

 2011年3月11日の福島原発事故のとき、日本に滞在していた著者は、ドイツにおける原発事故の報道がデタラメなことに憤慨する。東京も危険だと大阪に避難したドイツ人記者は、実状を確認もせず、想像だけで記事を書く。ドイツではさらにその情報に尾ひれをつけてさらに危険をあおる。

 おかげで福島原発は、ドイツの原子力政策に大きな影響を与えた。緑の党など革新系は原発の全面停止を打ち出していたのだが、メッケル首相は、産業の現実路線から原発支持を打ち出していた。しかし、国民世論の原発反対が異常に高まり、窮地に立たされた。敗北必至と思われるなか、メッケル首相は3回転ジャンプのような政策変更を打ち出し、革新派の先を行く原発廃止策を打ち出し、結果的にその政策が実行されれば、国民の電気料金負担が高まり、産業にも大きな打撃を与え、失業率はさらに高まるという反論を引き出し、それに応えるためには原子力を全面的に廃止するには問題があるという世論に誘導したのだという。政治家としてしたたかで、見事な手腕というしかない。

 

 タイトルにある日本の失点2点は何か。はっきりと書かれてはいないが、ドイツ人のように論理的なディスカッションができないこと、大学生が弱々しく元気のないことを指しているのだろうと思う。日本の教育システムも環境、とくに義務教育は、ドイツにくらべてずっとすぐれているという。しかし、わが国の大学教育の貧困や就活の現状については著者も嘆く。

 

ドイツ人の頑迷さに腹を立てる一方、日本人がドイツ批判を始めると、にわかにドイツ人を弁護しなければいけない気分になり、反対にドイツ礼賛に対しては、そうでもないとブレーキを掛けたくなるから、いつまでたっても心は定まらず、ドイツでも日本でも傍観者的になってしまうという。しかし、外国に長くいると、日本がつぶさに見えてくる。

 日本には素晴らしいところがたくさんある。人々の行動や思考の基本に思いやりが潜んでいるのがとりわけ素晴らしい。自信をなくす理由はまったくない。私たちは、私たちの価値観を捨てず、独立独歩、静かに成熟した国家を作っていけばよいと、著者は考える。

author:平田 周, category:社会, 05:40
comments(1), trackbacks(1), pookmark
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Comment
興味深く読ませていただきました!
実は今朝、本屋さんでタイトルの本を見掛け、気になっていたのですが。。。
海外暮らしの「やっぱり日本が好き」みたいなことが書いてあるのかと思ったら、すごいですね。
「住んでみた」ではなく、根を下ろしている感じがします。
紹介して下さり、ありがとうございました!
みにあ, 2013/11/19 2:25 PM









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エッセイとしてなら……。:住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち
住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち (講談社+α新書)作者: 川口 マーン 惠美出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/08/21メディア: 新書 ドイツ在住の日本人が、ドイツの生活と日本の生活を比べて書いたエッセイ。 タイトルにも有るように、筆者の主張としては「日
本読みの記録, 2014/11/01 9:43 PM