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ピケティの『21世紀の資本』
ピケティの『21世紀の資本』
 
5,500円もする経済学の本が品切れになるほどの売れ行きになっている。トマ・ピケティが書いた『21世紀の資本』である。どうしてこんな本が飛ぶように売れるのだろうと不思議だ。2014年7月26日号の『週刊東洋経済』で特集が組まれ以来、話題になっていたせいもあるが、アメリカでポール・クルーグマンなどが絶賛し、それもあってアメリカで大ベストセラーになったという前宣伝が効いたのかもしれない。この本が出る前から、「資本主義」がどうなるかという問題がわが国でも話題になっていた。だが、貧富の格差が世界的にいっそう広がっているという事実を多くの人が切実にとらえているからに相違ない。
 
 700ページもの大著を読む自信がなかったし、5,500円を払うことにも躊躇があり、買って読もうとは思わなかった。しかし、この本について書かれた薄い解説書が発売されたので読んでみた。1つは池田信夫著『日本人のためのピケティ入門』(東洋経済新報社)、もう1つは苫米地英知著『「21世紀資本論」の問題点』(サイゾー)である。
 前者は、中立的な評価だが、原著のきちんとした紹介ではなく、著者自身の経済についての問題意識や考えが述べられている。後者は、最初から終わりまで批判的で、ピケティの間違いを指摘することに狙いあある。
 
 『21世紀の資本』について、二人は次のように要約する。
 
【池田】 統計の不十分な19世紀以降のデータを各国の税務資料などをもとにしていろいろな方法で推定し、ほとんどの時期で不平等は拡大しており、戦後の平等化した次期は例外だった。「資本主義では、歴史的に所得分配の格差が拡大する傾向があり、それは今後も続くであろう」というのがピケティの主張である。
 
【苫米地】20カ国以上におよぶ主要な国々の「所得と資産」の関係を過去200年にもわたる資料で調べた結果、資本収益率は常に経済成長率を上回ることがわかった。これは資本主義そのものに経済格差が広がる要因が内包されていることを意味する。経済格差を是正するには、資産への累進課税が必要であり、しかもグローバルに課税しなければ意味がないとピケティは提唱する。
 
 苫米地氏は、批判の主要点として以下のようなことをあげている。
 
■経済学は自然科学に近い数理的理論を命とするもので、ピケティは経済学を歴史学に包括させ、経済学を殺してしまった。
■結論のr>g (r=資本収益率、g=経済成長率)は当たり前のことである。
■ピケティが解決策とするグローバルな資本課税は、当人も言っているように実現不可能だが、累進課税は不公平の拡大であり、資本主義を破壊する行為である。
■ピケティは、22歳で博士号を取得、MITの准教授になったほどの秀才だが、社会人経験がなく、『21世紀の資本』は数理的経済モデルを欠く。
 
 苫米地氏も、民主主義が資本主義に隷属するものであってはならないとするピケティの考えには賛成する。格差社会の拡大も是正されなければならいということでは同感するが、資本に対するグローバル累進課税では問題解決は不可能だと断じる。
 なお、苫米地氏は、この大著のアマゾンのキンドル版を1日で読んだとしている。その程度に易しいのか、苫米地氏の並外れた速読力・理解力なのか、原著を見ていないのでなんともいえない。
 
 内容的な価値はさておいて、日頃、本をあまり手にすることがないような人までこの本を買うため書店に走ったという現象のほうを憂慮する。まだ日本人にそれほどの知的好奇心が残っていたという意味では喜ぶべきだが、なんだか流行を追う、浅薄さを感じる。それほど急いで内容を知らねばならないものではなかろう。この本以外に、もっと読まれてしかるべきものがあるようにも思う。
 同じ資本主義について語る本としては、水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014/3)のほうがずっと役に立つ(この本もよく売れているが)。この本が英訳されて世界中で読まれればいいのだが。資本主義の欠陥もさることながら、資本主義自体がもはや歴史的な役割を終えつつあるとしたら、『21世紀の資本』は無意味になってしまうのではないか。
 
 ピケティのおかげで確信したのは、第二次大戦から今日までの70年余の経済が、200年という近代の歴史の中できわめて特異な期間だったということである。その特異な期間の中の現象だけをいくら数理論的に論じ、定理らしきものを見つけても歴史的な普遍性はないだろう。苫米地氏は、ピケティの歴史学的な手法を経済に取り入れたことを邪道と否定するのだが。
 

 
author:平田 周, category:社会, 09:02
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