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1979年という特異点

1979年という特異点

                        平田 周

 

 クリスチャン・カリルというジャーナリストが書いた『すべては1979年から始まった』(草思社 2015/1 原著:Strange Rebels – 1979 and the birth of the 21st century)を読んだ。そう言われれば、1979年は異常な出来事が世界中で起きた年だった。起きた出来事は相互に関連のないものだったが、そこには奇妙な共通点があった。反逆である。しかし、それは社会主義への、あるいは保守主義への反抗ではなかった。著者が原著のタイトルに選んだように、「奇妙な反逆」だった。そしてそれが、21世紀を方向づけるものだったという。

 

 1979年に生まれた人はもう35歳前後である。その年に成人式を迎えた青年もはや55歳。1979年に起きたことを実感して記憶している人は少なくなっている。当時を知っている自分には、それがたったこの間のことという感じだが、こうして1979年に起きた事件を並べて説明されると、未来の時点から過去を振り返る歴史書のような思いがした。歴史というのはこうしてつくられていくのだと思うと、感慨深い。著者はいう。「こうした個々の事件が起きたとき、誰もそれがいかに重要な意味を持っているのか、それから先がどうなるのかまったくわかっていなかった」と。距離あるいは時間を置いて眺めるとき、それが何であったのかが見えてくる。

 

 訳者があとがきに次のように書いている。「1979年を振り返ってみると、1月には米中国交が樹立、2月にはホメイニーが亡命先のフランスからイランに帰国、4月にイスラム共和国の樹立が宣言された。5月には、イギリスでサッチャーが首相に就任、新自由主義的経済政策を推進した。6月にはヨハネ・パウロ2世が祖国ポーランドを訪問。この訪問は東欧の人々に大きな影響を与え、非暴力の抵抗運動はやがて共産主義体制崩壊をもたらす。11月にはテヘランでアメリカ大使館占拠事件が起った。12月にはアフガニスタンでソ連の軍事介入によるクーデターが勃発した。中国ではこの年、小平が経済改革に着手し、7月には経済特区が設置された。つまり1979年は、社会主義の終焉、市場経済の台頭、宗教の政治化が始まった年だった」

 

 カリルは、この年に起きた政治的出来事を5つの物語として語る。自らがジャーナリストとしてつぶさにこれらの実状を観察したものである。邦訳本は460ページ以上の大書であり、学者が書いたように多くの参考文献と注釈がつけられているが、単に事実の羅列ではなく、ジャーナリストらしくドラマチックに話の展開を試みる。

 1979年に起きた事件の内容よりも、その前の10年間、そしてその後に起こったことを丹念に解説する。それはあたかも、1979年を頂上として裾野が広がっているかのように映る。

 カリルは、ロシア語、ドイツ語、英語に堪能で、50カ国以上での取材経験を持つジャーナリストだが、2004年から5年間、ニューズウィーク東京支局長を務めており、知日派である。本書の大部分は、東京滞在中の5年間に書いたものだという。5つの物語の出来事とは次のようなものだった。

 

(1) イランの王制独裁をイスラム教徒の民衆が倒した

  1979年1月、シャー(国王)は国外に逃亡し、イスラム共和国が誕生した。革命の中心にあった聖職者ホメイニーが実権を握った。

 

(2) アフガニスタンにソ連軍が侵攻

  197912月、傀儡の共産主義政権を擁護するため、アフガニスタンに軍を進めた。ゲリラ攻撃に悩まされ、戦いは10年近く続いた。

 

(3)、新教皇ヨハネ・パウロ二世が祖国ボーロンドを訪問

  大司教カルロ・ユゼフ・ヴォイティワが教皇(ヨハネ・パウロ二世)に選ばれ、1979年6月、母国ポーランドを訪問、共産主義体制を揺さぶった。

 

(4) サッチャー政権が誕生、新自由主義の経済革命

  1979年5月、マーガレット・サッチャーがイギリスの首相に選ばれ、社会主義を葬り、「市場」の伝道師となった。

 

(5) 中国で小平が経済改革を導入した

  文化大革命の後復権した小平は、1978年末、事実上実権を掌握し、その数カ月後には一連の経済改革を導入、近年の中國の成功の礎を築いた。

 

 著者は、まだ物語は終わっていないと述べている。人類の歴史は脈々と続く。しかし、どこかに、ここから世界が変わったという時点があるものだ。その意味で、確かに1979年は特異点だったのかもしれない。将来、第二次大戦以後の20世紀の歴史が書かれるとき、1970年代は最も注目されるべきものとなるであろう。アラブの対米英支配への反抗からオイルショックが起きた。アメリカ経済は長い停滞期に入ったが、その中でやがてアメリカの復活、グローバル化を実現するITの旗手マイクロソフトやアップルの芽が現れていた。

 1979年に起きたことを振り返ると、いま世界で起きていることの本質が見えてくるような気がした。

 

author:平田 周, category:思想, 04:09
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